『BABEL』日野草|タイトルに惹かれ塔に迷い込む

 

「バベル」

永遠の厨二病疑いのあるわたくしには抗い難い、意味深でドラマチックな響き。

そうして読んだのが、日野草先生の『BABEL』。まったくもって、面白ゅうございました。

 

最初は、「この人が◯◯なのね」などと思っておりましたのに、最後には「え、まさかの…?」と、ちょっと目を丸くしてしまう展開。

登場人物たちの立ち位置が、いつの間にやらぐるりと入れ替わり、読者である私もすっかり煙に巻かれていたのでございます。

ぼんやりとした表現なのは、ぜひ先入観なしで読んだ方が面白いからですのよ。

 

しかしながら、再読してみますと……作者は何ひとつ嘘など書いておられませんの。

わたくしたち読者が勝手な思い込みによって、いかに認識を歪ませて読んでいたか、しみじみ思い知らされます。

「まったく、してやられたわねぇ」と、お紅茶片手に感心しきり。

 

さて、この『BABEL』、どうやら単品では終わらぬご様子。

実は三部作の真ん中に位置する作品でございまして、『GIVER』『BABEL』『TAKER』という順に、しっかりとした流れがあるとのこと。

わたくし、てっきり単独の一冊かと思っておりましたものですから、「あら、これは由々しき見落としを……!」と、少々お顔が赤くなってしまいました。

 

読み進める順番にも、ちょっとお作法がございますのよ。

 

まずは『GIVER』。これを読まずして『TAKER』に進むなど、まるで前菜を飛ばしていきなりメインディッシュに手をつけるようなもの。

お行儀がよろしくないうえに、美味しさも半減してしまいますわ。

 

ですから、ご興味おありの方は、どうぞ順番通りにお読みあそばせ。

塔の中で迷子になるも良し。贈り、奪い、そして考える。

日野草ワールドは、なかなかに手強く、けれど実に味わい深くございます。

 

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